高齢者の電話詐欺対策:「電話を切る勇気」を育む家族のサポートと具体的な防犯機能活用法
離れて暮らす親御様の安否を気遣う中で、電話を通じた詐欺被害への不安を感じる方は少なくありません。高齢者を狙う電話詐欺の手口は年々巧妙化し、対策が追いつかないと感じることもあるかもしれません。このページでは、高齢の親御様を電話詐欺から守るために、どのような手口があるのか、そして親御様が不審な電話に惑わされないための「電話を切る勇気」を育む方法、さらに具体的な電話機の防犯機能の活用法について解説いたします。
巧妙化する電話詐欺の最新手口
高齢者を狙う電話詐欺は、その入り口の多くが「電話」です。詐欺師はあの手この手で親御様に接触を図り、心理的な隙を突こうとします。代表的な手口とその特徴を理解することは、対策の第一歩となります。
1. オレオレ詐欺(特殊詐欺)の進化
「オレオレ詐欺」は、親族(息子、孫など)を装い、「交通事故を起こした」「会社の金を使い込んだ」「急病で倒れた」といった緊急事態を装って金銭を要求する手口です。近年では、電話番号が変わったというSMSを送りつけ、その後の連絡で詐欺を仕掛けるケースや、弁護士や警察官、病院関係者などを名乗る人物が「家族が大変な状況に陥っている」と連絡してくることもあります。
2. 公的機関を装う詐欺
警察、役所、銀行、年金事務所、電気・ガス会社などを装い、「医療費の還付金がある」「未払いの料金がある」「あなたの個人情報が漏洩している」などと告げ、ATMへ誘導したり、有料のサポートを勧めたりする手口です。多くの場合、「今日中に手続きをしないと期限が切れる」などと急かして、冷静に考える時間を与えません。
3. 架空請求詐欺
利用した覚えのないサービスや商品の代金を請求する電話です。「サイトの登録料が未払いです」「ワンクリック詐欺で個人情報が流出しました」などと不安を煽り、金銭を振り込ませようとします。
これらの手口に共通するのは、相手に考える時間を与えない、緊急性を装う、公的機関や身内を名乗ることで信用させようとするという点です。
「電話を切る勇気」を育む心理的アプローチ
親御様が不審な電話に対応してしまいがちな背景には、真面目さ、親切心、そして相手をむげにできないという気持ちがあるかもしれません。また、情報の少なさから、何が詐欺で何が本当のことか判断に迷うことも考えられます。
1. 親御様への「声かけ」のヒント
親御様に詐欺対策について話す際は、一方的に「電話に出てはいけない」と指示するのではなく、親御様の心情に寄り添い、安心感を与えながら伝えることが重要です。
- 「最近、変な電話が多いみたいだから、知らない番号からは出ないで留守番電話にしておくと安心だよ」
- 責めるような言い方ではなく、「心配だから」という気持ちを伝えるようにしましょう。
- 「警察や市役所、銀行の人が、いきなりお金の話を電話ですることは絶対にないから、もしそういう電話があったら、すぐに切ってね。慌てなくて大丈夫だよ」
- 公的機関を装う手口が多いため、具体的な事例を挙げて注意を促します。
- 「もし、少しでも『あれ?』と思う電話があったら、電話を切ってから、まず私(あなた)に電話してほしいな。一緒に考えよう」
- 「相談できる相手がいる」という安心感を持ってもらい、一人で抱え込ませないことが大切です。
- 「私や〇〇(孫の名前など)から電話番号が変わったという連絡があっても、必ず事前に決めた合言葉を言ったり、別の方法(ショートメールなど)で確認したりするようにしようね」
- 家族間でのルールを設けることで、本人確認の有効な手段となります。具体的な合言葉を決めておくのが効果的です。
2. 「確認する」習慣の重要性
不審な電話がかかってきたら、まず「電話を切る」こと。そして、必ず家族や信頼できる人に相談する、あるいは公的機関に自分で確認する習慣をつけるよう促しましょう。詐欺師は「すぐに」「今すぐ」と急かすため、冷静に考える時間を作ることが非常に重要です。
具体的な防犯機能と対策の活用
電話機や電話サービスには、詐欺被害を防ぐための様々な機能があります。これらを活用することで、不審な電話からの接触を未然に防ぎ、親御様の安全を高めることができます。
1. 固定電話の防犯機能活用
- ナンバーディスプレイ(発信元表示サービス)の利用:
- かかってきた電話番号が表示されるため、知らない番号や心当たりのない番号からの着信を識別できます。多くの電話機で着信拒否設定も可能です。
- 通話録音機能付き電話機の導入:
- 着信時に「この通話は防犯のため録音されます」などのアナウンスが流れることで、詐欺師は録音を嫌い、電話を切ることが多くなります。また、万が一被害に遭った場合でも、証拠として役立ちます。
- 迷惑電話対策機能の活用:
- 特定の番号からの着信拒否、非通知着信拒否、着信前に自動で相手に名乗るよう促す機能など、様々な迷惑電話対策機能が搭載された電話機が増えています。
- 留守番電話の設定:
- 知らない番号からの電話には出ず、留守番電話に切り替える習慣をつけることが最も効果的な対策の一つです。本当に必要な用件であれば、メッセージを残すはずです。親御様には「知らない番号からの電話は留守電に任せて大丈夫」と伝え、無理に電話に出る必要がないことを理解してもらいましょう。
2. 携帯電話の防犯対策
- 迷惑電話対策アプリの利用:
- 携帯電話の場合、迷惑電話を自動で判別し、着信を拒否したり警告表示したりするアプリがあります。親御様がスマートフォンをお持ちであれば、導入を検討するのも良いでしょう。
- 知らない番号からの着信に出ない習慣:
- 固定電話と同様に、知らない番号からの着信には出ず、後で折り返すか、SMSなどで確認する習慣を身につけることが重要です。
3. 家族で実践する具体的な対策
- 定期的な声かけと情報共有:
- 親御様と定期的に連絡を取り、最近の詐欺の手口について話したり、不審な電話がなかったか尋ねたりする機会を設けましょう。
- 不審な電話があった際の相談体制の確立:
- 親御様がいつでも気軽に相談できるよう、家族間で連絡しやすい体制を整えておくことが大切です。「何かあったらいつでも連絡してね」と具体的に伝えておきましょう。
- 公的機関への相談の促し:
- 不審な電話やメールについて少しでも不安があれば、警察相談専用電話(#9110)や国民生活センター(消費者ホットライン188)に相談するよう促しましょう。これらの機関は、客観的な情報とアドバイスを提供してくれます。
まとめ
高齢者を狙う電話詐欺から親御様を守るためには、家族の継続的な関心と具体的な対策が不可欠です。巧妙化する手口を理解し、親御様が不審な電話に惑わされないための「電話を切る勇気」を育む声かけを心がけましょう。そして、通話録音機能付き電話機の導入や留守番電話の活用といった具体的な防犯対策を講じることで、詐欺被害のリスクを大きく減らすことができます。
大切な親御様が安心して生活できるよう、家族で連携し、詐欺対策について日頃から話し合う機会を持つことが何よりも重要です。