高齢者のキャッシュカード詐欺対策:自宅訪問型手口から親を守る具体的なステップ
離れて暮らす親御さんが詐欺の被害に遭うのではないかと心配されている方も多いのではないでしょうか。特に、巧妙化する詐欺の手口の中でも、「キャッシュカード詐欺盗」や「預貯金詐欺」といった、自宅に直接訪問してキャッシュカードや現金をだまし取る手口は深刻な被害につながる可能性があります。
この手口は、電話で高齢者を信用させ、自宅に訪問してくるため、被害に遭うリスクが高いのが特徴です。本記事では、これらの訪問型詐欺の最新手口と、大切な親御さんを被害から守るための具体的な対策、そして効果的な声かけのヒントについて解説いたします。
巧妙化するキャッシュカード詐欺盗・預貯金詐欺の手口
キャッシュカード詐欺盗や預貯金詐欺は、主に以下のような流れで高齢者をだまし、キャッシュカードや現金を奪い取ります。
- 不審な電話: 警察官、銀行員、市役所の職員などを名乗る人物から電話がかかってきます。内容は、「あなたの口座が不正利用されている」「医療費の還付金がある」「キャッシュカードが偽造されている可能性がある」といった、相手の不安を煽るものです。
- 巧妙な誘導: 相手は「不正利用を防ぐために新しいカードと交換する必要がある」「手続きのため、カードを一時的に預かる必要がある」などと説明し、巧みに話を誘導します。
- 自宅への訪問: 「今から担当者が自宅に伺う」と告げ、言葉巧みに親御さんを信用させ、自宅に訪問してきます。訪問してきた人物は、警察官や銀行員の制服のようなものを着用していることもあり、本物と信じ込ませる工夫が凝らされています。
- カードや現金の窃取:
- キャッシュカード詐欺盗: 「カードを交換します」「不正利用されたカードを調べておきます」などと言ってキャッシュカードを預かり、隙を見て本物のカードと偽物のカードをすり替えたり、暗証番号を聞き出したりします。
- 預貯金詐欺: 「預金を引き出して、安全な場所で保管します」などと言って、親御さん自身にATMで現金を下ろさせ、その現金をだまし取ったり、キャッシュカードを預かって勝手に引き出したりします。
この手口の厄介な点は、親御さんが犯人と直接対面し、自宅という安心できるはずの場所で詐欺が行われるため、冷静な判断が難しくなることにあります。
親御さんを訪問型詐欺から守るための具体的な対策
このような訪問型詐欺から親御さんを守るためには、複数の対策を講じることが重要です。
1. キャッシュカードや暗証番号の厳重な管理
- 「キャッシュカードは人に渡さない」「暗証番号は教えない」:この原則を徹底することが最も重要です。警察官や銀行員であっても、電話で暗証番号を聞いたり、キャッシュカードを預かったりすることは絶対にありません。
- 保管場所の再確認:キャッシュカードや通帳の保管場所が玄関近くや目につく場所にないか、一緒に確認し、安全な場所へ移すことを検討してください。
2. 自宅訪問者への警戒と対応
- 安易にドアを開けない習慣:知らない人が訪ねてきても、すぐにドアを開けないよう親御さんに伝えてください。ドアチェーンをかけたり、インターホン越しに話したりする習慣をつけることが大切です。
- 身分確認の徹底:訪問者が公的機関の職員や金融機関の担当者を名乗った場合でも、必ず所属機関の名称と氏名を確認し、その場で相手が持っている名刺の連絡先ではなく、自身で調べて正しい連絡先に電話して事実確認をするよう促してください。確認が取れない場合は、訪問者に対応しないようにしましょう。
- 宅配業者を装う手口にも注意:近年では、宅配業者を装って荷物を届けに来た際、不審な言動でカードをだまし取ろうとする事例も報告されています。覚えのない荷物が届いても、すぐにサインせず、不審に感じたら受け取りを拒否するよう伝えてください。
3. 家族間のルール作りと情報共有
- 合言葉の設定:家族にしかわからない合言葉を設定し、もし不審な電話や訪問があった際に、その合言葉を尋ねるように親御さんに伝えてください。合言葉を言えない相手は家族ではないと判断できます。
- 定期的な連絡:離れていても、普段からこまめに連絡を取り合うことで、親御さんの些細な変化に気づいたり、詐欺被害の兆候を早期に発見したりしやすくなります。
- 詐欺情報・対策の共有:最新の詐欺手口の情報を定期的に親御さんと共有し、一緒に詐欺対策について考える時間を持つことが重要です。
4. 電話の防犯機能や留守番電話の活用
不審な電話が詐欺のきっかけとなることが多いため、電話機の防犯機能を活用することも有効です。
- ナンバーディスプレイ:電話番号を確認し、知らない番号には出ない、または家族に相談してから対応するよう促しましょう。
- 留守番電話設定:常に留守番電話に設定し、用件が確認できるまで電話に出ないようにする方法です。詐欺グループは留守番電話を嫌う傾向があります。
親御さんに詐欺対策を伝える際のヒント
親御さんに詐欺対策を伝える際は、言い方一つで受け止め方が大きく変わります。
- 「最近こんな詐欺があるみたいだよ」と情報共有の姿勢で:頭ごなしに「騙されないで」と伝えるのではなく、「最近、こんな手口が流行っているらしいから、一緒に気をつけよう」というように、情報共有の形で話を進めると、親御さんも抵抗なく耳を傾けてくれます。
- 否定せず、共感する姿勢:「もし怪しいなと思ったら、すぐに私に相談してほしい」「一人で抱え込まずに、いつでも連絡してね」と伝え、親御さんが気軽に相談できる関係性を築くことが大切です。
- 具体的な事例を交えて説明:「警察官がキャッシュカードを預かりに来ることは絶対にないよ」「銀行員は電話で暗証番号を聞かないよ」など、具体的な行動を例に出して説明すると、親御さんも理解しやすくなります。
- 一緒に考える時間を持つ:電話機の防犯機能の設定や、不審な訪問があった際の対応など、具体的な対策について、親御さんと一緒に考え、実践していくことで、より効果的な対策につながります。
困ったときは公的機関へ相談を
もし、親御さんが詐欺に遭ってしまったかもしれない、あるいは不審な電話や訪問があった場合は、すぐに以下の公的機関に相談するよう促してください。
- 警察庁の相談窓口(#9110):緊急性がない場合でも、詐欺の疑いがある場合は警察に相談できます。
- 消費生活センター(#188):消費生活に関するトラブルについて、専門家が相談に応じてくれます。
まとめ
高齢者を狙うキャッシュカード詐欺盗や預貯金詐欺は、巧妙な手口で大切な親御さんの財産を狙ってきます。しかし、適切な知識と対策、そしてご家族のサポートがあれば、被害を防ぐことは十分に可能です。
親御さんと普段からコミュニケーションを取り、最新の詐欺手口や具体的な対策について共有し、もしもの時にはすぐに相談できる関係性を築いておくことが何よりも重要です。この情報が、親御さんの安全を守る一助となれば幸いです。