高齢者のATM詐欺対策：親が騙されないための具体的な行動と家族のサポート
離れて暮らす大切な親御様が、巧妙な詐欺の被害に遭うのではないかと心配されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。特にATM（現金自動預払機）を介した詐欺は、高齢者が狙われやすく、金銭的な被害だけでなく、精神的なダメージも大きい深刻な問題です。
このページでは、高齢者を狙うATM詐欺の具体的な手口と、被害を未然に防ぐための効果的な対策、そして遠隔からでもできる家族のサポート方法について詳しくご紹介いたします。親御様が安心して生活できるよう、ぜひこの情報をご活用ください。
ATM詐欺の最新手口と高齢者が狙われる背景
ATMを悪用した詐欺は、その手口が巧妙化しており、高齢者が騙されやすい状況を作り出しています。代表的な手口とその背景を理解することが、対策の第一歩となります。
1. 還付金詐欺
役所の職員や税務署職員を装い、「医療費や税金の還付金がある」と電話をかけ、ATMでの手続きを指示する手口です。多くの場合、「今日中に手続きしないと期限が過ぎてしまう」「ATMの操作は簡単」などと急がせ、冷静な判断をさせないように仕向けます。
- 手口のポイント:
- 公的機関を名乗り、信頼させようとします。
- 「還付金」という言葉で得をすると思い込ませます。
- ATMに誘導し、電話で指示をしながら相手の口座へ送金させます。
- ATMで還付金が戻ることは絶対にありません。
2. 預貯金詐欺（キャッシュカード詐欺盗）
警察官や銀行協会職員、大手百貨店員などを名乗り、「あなたのキャッシュカードが不正に利用されている」「古いカードを新しいものと交換する必要がある」などと電話をかけてきます。その後、自宅を訪問してキャッシュカードをだまし取ったり、「封筒に入れて保管しておいてほしい」と指示して、目を離した隙に別のカードとすり替えたりする手口です。暗証番号を聞き出すこともあります。
- 手口のポイント:
- 警察や銀行など、信頼のおける機関を装います。
- 「あなたの財産が危険にさらされている」という不安を煽ります。
- キャッシュカードの回収や交換を促し、巧妙にカードをだまし取ります。
- 警察官や銀行員が自宅でキャッシュカードを預かったり、暗証番号を聞いたりすることは絶対にありません。
高齢者が狙われる背景
詐欺犯は、以下のような高齢者の特性を悪用することが多いとされています。 * 社会情勢への不安や情報不足: 詐欺の手口を知る機会が少ない、または新しい情報に触れにくい場合があります。 * 公的機関への信頼感: 役所や警察、銀行といった機関からの連絡は正しいものだと信じやすい傾向があります。 * 善意や助けたい気持ち: 相手の困っている状況を真に受け、親切心から指示に従ってしまうことがあります。 * 認知機能の低下: 判断力や記憶力が低下している場合、複雑な状況を理解しにくくなります。 * 孤独感: 普段から会話相手が少ない場合、詐欺犯からの電話を真剣に聞いてしまうことがあります。 * 急かされる状況への弱さ: 「今日中」「今すぐ」といった言葉で冷静な判断を失い、言われるがまま行動してしまうことがあります。
親が被害に遭わないための具体的な対策
親御様が詐欺の被害に遭わないためには、日頃からの心構えと具体的な行動が重要です。
1. 「ATMで還付金は戻らない」と認識する
公的機関がATMで還付金の手続きを指示することは一切ありません。これは詐欺の典型的な手口であると認識し、もしそのような電話があってもすぐに電話を切りましょう。
2. キャッシュカードや暗証番号は誰にも教えない
警察官や銀行員、役所の職員であっても、キャッシュカードを預かったり、暗証番号を聞いたりすることはありません。キャッシュカードはご自身の財産そのものです。厳重に管理し、電話や訪問で求められても絶対に渡したり、教えたりしないでください。
3. 不審な電話はすぐに切る、または留守番電話を活用する
知らない電話番号からの着信や、身に覚えのない話の電話は、詐欺の可能性が高いと疑うことが大切です。「電話を切る勇気」を持ち、迷わず電話を切りましょう。 また、自宅の電話機を常に留守番電話設定にしておくことも有効です。かかってきた電話の相手が名乗らない場合や、怪しいと感じる場合は、応答しないようにしましょう。
4. ATMでの「携帯電話での通話」「遠隔操作」は詐欺のサイン
ATMコーナーで携帯電話で通話しながら操作している人を見かけたら、詐欺に遭っている可能性が高いです。また、ATMの操作を指示するために、電話口で「画面の〇番を押してください」などと遠隔操作させるのは、まさしく詐欺の手口です。ATMを操作中に電話がかかってきたり、携帯電話での通話を指示されたりした場合は、すぐに操作を中止し、電話を切りましょう。
5. 困ったときはすぐに相談する習慣をつける
少しでもおかしいと感じたら、一人で抱え込まず、必ず家族や信頼できる友人、または公的機関に相談するように促しましょう。「こんなことを相談したら迷惑だと思われないか」といった遠慮が、詐欺被害につながるケースもあります。「迷ったら相談」を合言葉にすることが大切です。
離れて暮らす家族ができる効果的なサポート
離れて暮らしていると、親御様の状況を常に把握することは難しいかもしれません。しかし、工夫次第で効果的な詐欺対策を行うことができます。
1. 繰り返し情報共有と声かけを行う
詐欺の手口は日々変化するため、一度伝えただけでは忘れられてしまうこともあります。定期的に電話や訪問の際に、「最近こんな詐欺があるらしいよ」「ATMを使うときに困ったことはない？」などと、世間話の延長で話題に出してみましょう。責めるような口調ではなく、心配している気持ちが伝わるように穏やかに話すことが大切です。
- 声かけの例:
- 「お父さん、最近、役所を名乗る還付金詐欺が多いんだって。ATMで還付金が戻ることはないから、もしそんな電話があったら絶対に信じないでね。」
- 「お母さん、銀行員や警察官がキャッシュカードを預かりに来ることは絶対にないからね。もしそんな話があったら、すぐに電話を切って、私に連絡してほしいんだ。」
- 「もし変な電話がかかってきたら、無理に相手をせず、すぐに電話を切っていいからね。それで困ったことがあったら、遠慮なく私に電話してほしい。」
2. 防犯機能付き電話機の導入を検討する
通話録音機能や着信拒否機能、迷惑電話対策機能が搭載された電話機の導入を検討してみましょう。これらの機能は、詐欺犯からの電話を物理的にブロックしたり、会話の証拠を残したりするのに役立ちます。設定方法や使い方を一緒に確認し、親御様が安心して使えるようにサポートしてください。
3. 家族間の「合言葉」や「確認ルール」を設定する
本当に家族からの連絡かどうかを判断できるよう、事前に合言葉を決めておくことも有効です。また、お金に関する重要な話は「電話だけで済ませず、必ず一度直接会って話す」といったルールを決めておくことも、詐欺を防ぐ上で効果的です。
4. 見守りサービスの利用を検討する
自治体や民間の企業が提供する見守りサービスの中には、安否確認だけでなく、緊急時の連絡体制や、不審な訪問者への対応をサポートしてくれるものもあります。親御様の状況やニーズに合わせて、利用を検討してみるのも良いでしょう。
5. 周囲の人々との連携を促す
親御様の近隣に住む方や、地域の民生委員など、信頼できる方々と日頃からコミュニケーションを取るよう促し、もし何か不審なことがあった場合に相談できる関係を築いておくことも重要です。
もし不審な連絡があったら、まず相談を
万が一、親御様が不審な電話や訪問を受けたり、詐欺ではないかと感じた場合は、決して一人で判断せず、すぐに以下の機関に相談するよう伝えてください。
- 警察相談専用電話：#9110 (緊急性のない相談や問い合わせ)
- 国民生活センター：消費者ホットライン188 (身近な消費生活センターにつながります)
- 最寄りの警察署や交番
- 金融機関 (ご利用の銀行支店など)
まとめ
ATM詐欺は、高齢者を狙う手口が巧妙化しており、油断はできません。しかし、詐欺の手口を理解し、具体的な対策を講じることで、被害を防ぐことは十分に可能です。
離れて暮らす親御様が詐欺に巻き込まれないためには、家族の継続的な関心とサポートが不可欠です。この記事でご紹介した情報が、親御様を守るための一助となれば幸いです。大切な家族が安心して暮らせる社会のために、皆様で詐欺対策に取り組んでいきましょう。